漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

カタリバよお前もか

■午後から近代美術館へ。滑り込みで「国宝・法隆寺展」を観てきた。いや、行けてよかった。飛鳥時代の仏像は静かな感じがするな。

■菩薩半跏思惟像を観られただけで十分元はとれたと思ったけど、玉虫厨子やら百済観音やら、やっぱりまだ観たいものはある。高校の修学旅行で法隆寺には行っているはずなんだけど、なにも覚えとらん。もったいない。

■書きたいことがあったのだが、眠くてたまらないので明日書きます。

(以下、10月31日記)

文科省の調査結果を受けて認定NPO法人カタリバ代表の今村久美氏が記事を書いている。

news.yahoo.co.jp

データも豊富、家庭の経済状況に触れるなど目配りの利いた記事だが、一読してイヤな感じを受けた。再読して理由がわかった。

■何度かここにも書いたが、かつて「Future Harbor」なる団体があった。全国に52万人(当時)の若年無業者は親が死んだらどうなるか。ホームレスか自殺か餓死か凶悪犯罪者が関の山。お子さんをそうはさせたくはないでしょうとあおり、「社会復帰のお手伝い」をすると訴え出た。

■2018年、クラスジャパンプロジェクト発足。長期欠席者は全国に20万人(当時)いる。不登校はひきこもりにつながり、無職者人口の増加に直結すると警鐘を鳴らし、「学校復帰のサポート」を打ち出した。

■そして今回の記事。不登校の児童生徒のうち、学校内外で相談・指導を受けた子は全体の63.7%という調査に今村氏は着目。36.3%の子供が社会から隔絶された状態にあるとして、こう続けます。

こうした状況は、”今、現在”子どもたちが苦しいだけでなく、子どもたちの未来において、ひきこもり、孤独・孤立等、様々な困難への入口になる可能性があると考えられます。

少し古いデータであり統計学的な相関・因果関係は確定できませんが、次のようなデータ・研究もあります。

  • ひきこもりになったきっかけとして、小中高での不登校を挙げる割合は18.3%
  • ひきこもりの人のうち、小中学時代に不登校を経験した割合は一般群の約5.6倍(30.6%。一般群は5.4%)
  • 死亡時に30歳未満であった自殺者の家族への調査によると、自殺者の40%に不登校経験あり。また、そのうち75%に学校復帰の経験があり、短期的な学校復帰が必ずしも長期的に望ましい結果につながらないことも示唆

より長期的に、40~64歳のひきこもりの方を調査対象とした内閣府調査をベースにかなりラフな推計をすると、今15歳の不登校の子どもの約16%が、40歳時点でひきこもりになる可能性もあると考えられます。いずれにせよ、不登校は子どもの今だけの問題ではないのです。

そしてこう述べる。

また、ニート・無業者の若者を対象とした調査では、約4割が不登校を経験していました。こちらも因果・相関関係を確言はできませんが、不登校と就労に関連があることは推測されます。不登校を入口に孤独・孤立状態が続くと、人口減少の続く日本社会で更なる労働力人口の低下、ひいては心身の不調や収入の途絶による医療費・社会保障費の増大、社会経済活動・地域活動の停滞など、社会・経済に広範な影響が及ぶおそれもあるのです。

不登校が経済衰退につながるとの指摘はクラスジャパンもしていた。

■こういった物言いになる理由はわからなくもない。不登校に関心がない人を振り向かせるには、「支援」は社会に有益なのだと示すのが手っ取り早い。記事中にも「社会からドロップアウトする前の子どものうちに、社会が確実に手を差し伸べることは、とても合理的な未来への投資です」といった文章がある。

■だが、世間は思ったほど興味を示さないのだ。この記事に強く反応するのはむしろ不登校の子であり、不登校の子を持つ保護者だろう。このままでは就職できない、ひきこもりになる、自殺してしまう(でも、短期的に学校復帰させてもダメ)。そう焦り、追い詰められる。「Future Harbor」から連なる(もっと前からあるのだろうが)脅しの手法をカタリバもしっかり踏襲している。

■カタリバは経産省と組み「不登校ゼロ社会を目指して」いる。ここでの「不登校ゼロ」は「個別な学び」を「選択」できるようにして不登校という概念をなくす意味だが、しているのはオンラインを活用した不登校支援プログラムで、要は学校の拡張だ。もうひとつがアウトリーチによる家庭への公的訪問支援。学校拡張と家庭介入の二大潮流を「脅し」をもって進める。カタリバよ、お前もか、という気持ちです。