漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

不登校に関する調査研究協力者会議を傍聴したよ

不登校に関する調査研究協力者会議がネットで傍聴できるというので、今回初傍聴してみた。文科省にメールしてWeb会議ソフトを利用するためのURLと資料を送ってもらうことになっていたのだけど、それが全然来ないのでせっついてようやく開始10分前にメールが来た上に、Zoomではないソフトだったので設定に手間取って最初10分程度音声が聞こえなかったことは書き留めておく。

■前回は不登校の実態調査と横浜市の事例を扱い、今回は京都市鳥取県の事例を扱って議論をするという流れだった。これは、大きな自治体以外でどのようなことが出来ているかを見て議論を進めたいという意図があったという。

京都市教育委員会不登校対策の推しは「クラスマネジメントシート」というアンケート調査ツールで学級の雰囲気・風土と児童生徒の適応度を測るものだ。スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)との連携の際に利用するという。

■京都の話で引っ掛かったのは、SCと教員が気軽に話せるようになってきたという話の中で「SCの守秘義務の考え方が学校全体で守りながらという認識が進んできた」という一節だ。これ、もしかして子供がSCにだけ打ち明けたような秘密とかまで、学校内で漏らさなければ問題無しとして教員と共有するケースがあるのではないか。教員からするとSCが子供とどういう関係を作っているのかがよくわからないという話は聞くことがあるが、それは子供自身が教員や学校から距離を取りたいと思っているのをSCが優先しているケースだったというのもある。一概に教員が全てを把握するのが子供にとって最善の利益かとは言えない。

鳥取県教育委員会はそもそも市町村数・人口が少ないので連携しやすいことが強みであると同時に、専門家・支援者・支援場所が少ないという弱みも生まれると話していた。この点は全国の過疎化地域には共通していて、後志を見ていても同じように感じるところだ。そして、不登校対策の推しは来年から始まる小学校高学年の教科担任制で、教員が子供と話す時間が多くなり不登校未然防止になるだろうという期待を持っているそうだ。また、フリースクールへの補助制度とサドベリースクールとの連携も話題になっていた。

■しかし、小学校で不登校対応が上手くいった事例を語った時の「校長の改善に向けた覚悟とチームとしてやっている安心感があった」という言葉にはひっかかるものがあった。不登校は改善されねばならないことで、それを達成するには覚悟(何に対するものかは不明)を決めなければならないくらい成功しないプロジェクトなのか。それに関わる教員は不登校に自分だけで当たることは孤独に追い込まれるようなきつい仕事であるということなのか。

■事例を受けての議論の中で、福岡県にある私立高校立花学園の校長が話していたのが、自分が先日合同教研で話したことと丸被りであり、上記の違和感にもつながるものだった。これまでの調査研究協力者会議の中で「不登校は問題行動ではない」としているのに、結局現場では不登校は子供にとってよろしくないことで学校に行くことが前提になった対応しかやってない、「未然防止」であり「解決」が求められるのはおかしいという話には、賛同するしかない。

フリースクール全国ネットの江川さんは、前回出た不登校の実態調査結果からすると子供が相談するのはSCやSSWは少なく親が一番多いのだから、親に対して不登校になった時にどう子供と接するかのノウハウを出さないと実態に合わないと話していた。これまた賛同するほかない。

■その他、SCやSSWが学校と同じ立場になってしまうと子供にとっての中間領域が無くなるのではないかという話や、SCやSSWの専門職としての自立性を担保して高度な専門性(多分これは学校サイドがわかってない)を発揮できるようにして蓄積も必要という話があった。

■傍聴していたのは全国から70人ほど。中には、奥地さんの名前もあったよ。(金曜日)