漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

教育データの標準化

■どうも、マイナンバーに成績を紐づける、という話は観測気球っぽい気がする。マイナンバーと学習記録をリンクさせたら人事に役立ちそうという経団連の話も「教育データの利活用に関する有識者会議」で検討されている教育データの標準化の話が裏にありそうだ。
www.mext.go.jp

■これまでに三回開かれているこの会議の資料をざっと眺めたが、マイナンバーのことは出てこない。何を狙っているかは第三回の【資料7】下山政府CIO補佐官 発表資料が、政府の考えをまとめていると思われる。
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/content/20201120-mxt_syoto01-000011202-09.pdf

■政府として、国民に関する様々なデータをデジタル化しようという方向性なのは菅内閣が今進めている「デジタル庁」の話とも繋がり、教育分野においても推進されている。文科省としては、まず学習内容をリスト化するという方向だが、将来的には児童生徒・教職員・学校の全ての情報をデータ化する方針のようだ。当然その中には、行動記録として不登校も入っていくだろう。マイナンバーに紐づけられるというちょっとセンセーショナルな話よりも、実はこの「データ化」に伴う生徒指導や不登校への対応の画一化が大きな問題になるのではないか。文科省としては、現状の教師の労働に影響を与えないようにデータ化の労力を少なくすると考えているようだが、それは現状の対応を固定化する方向に進むだろう。そして一度データの形が決まれば、生徒指導や不登校対応はそれに当てはまるかどうかをまず考える力学が働くはずだ。生の現場で行っていることをデータ化するはずが、データ化することを意識した視点で現実に関わるようになる。それを恐れる。フリースクールもこれはしっかり考える必要がある。データにならないならその存在は国から無視されるという問題がまずある。無視はイヤだから関わりになろうというなら、自分たちのやっていることをどうデータ化することになるのかを考えることになるが、それは多様な学びとどう繋がるのか。

■更に、この国がデジタルに限らず記録・データを如何に雑に扱ってきたかを思い起こすと、とてもとても政府や有識者が考えているような素敵デジタル未来に諸手を挙げて賛成などできないのだ。訪問型フリースクールという名乗りをして15年ほど、全部で20年近く主に不登校を窓口にしてちょいちょい教育について考えてきたが、今うちの国の教育の形は大混乱を迎えようとしているのではなかろうか。政治家の何だかよくわからない実験に付き合わされているように思う。

■暗い記事を書いてから、そういえば明るいニュースもあったなと思いだしたので追記。
go2senkyo.com
札幌市教委が夜間中学を資生館小学校に作ると。どういった観点で作るかは以下のpdfを参照。これ、フリースクールとも連携取らないのかね。
https://www.city.sapporo.jp/kyoiku/top/documents/04_yachu_456syou.pdf