漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

その線を問う

※下に追記があります

北海道新聞にこんな記事が出ていたと教えてもらいました。新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大防止のため、札幌市は学校や福祉施設へマスクや消毒液を配布する予定ですが、その際、フリースクールは配布先から除外すると札幌市議会文教委員会で説明があったそうです。札幌市は2012年度よりフリースクール補助をおこなっているが、マスクや消毒液などは補助対象に含まれないからというのがその理由です。

■マスクにしろ消毒液にしろ、フリースクールへの「補助」ではありません。子どもの安全と健康を守るために配布されるものでしょう。札幌市の定めた「子どもの権利条例」には、重要な「4つの権利」のひとつとして「安心して生きる権利」が記されています。補助要綱にないというのはそもそも予想外の事態なのだから当たり前で、だから補正予算を組むのでしょう。

■ことはマスクや消毒液をよこせという単純な話ではありません(在庫が尽きかけてきたので欲しいのは欲しいですが)。一時的にでも一斉休校にせねばならないほどの事態だと札幌市は認識していたはずです。感染拡大防止に学校や福祉施設にマスクを配布すべきと判断したわけです。そんなときに、どうして学校へ通っている子どもとフリースクールを利用している子どもとのあいだに線を引くのですか。片方の健康には配慮し、もう片方は省りみない。その根拠はなんですか。マスク程度でこの扱いなら、もっとのっぴきならない状況になれば、さらに大きな差をつけるのではないか。それを危惧します。今回はフリースクールだった。でも次は?

■新年度に入ってすぐ子どもの権利についてのチラシが札幌市から送られてきました。今回はちょっとテイストを変えたね、見やすくなった、なんてうわさしてたのにさ(本当だよ)。学校に行っているかどうかと子どもの権利は関係ない。だから子ども未来局がフリースクールの担当になり、こうしてチラシも送ってくるんだと思ってたけど、違ったのか。「すべての子どもが生まれながらに子どもの権利を持っています」「子どもの権利を大人も子どもも大切に」という言葉が急にそらぞらしく見えます。

■取り急ぎ子ども未来局には事実確認のメールを送りました。いまは返事を待っているところです(14:22現在)。それにしても、文教委員会でこの質問をした議員がいて、それを記事にした記者がいたから知ることができたので、感謝とともにちょっと安穏としすぎていたと反省しています。なれ合いになっちゃいけないな。いつだってこうしてひっくり返されるんだから。「札幌市は進んでるから」なんてよその地域のフリースクールに言われたりもしましたが、このざまですよ、ええ。

■そして気になるのは、家にいる子どもたちはどうなるのかということです。教育支援センターには配られるのかな。これも要確認だな。

【追記】

■夕方に子ども未来局から返信がありました。まず、今回計上したのは「職員向けに配布するためのマスクなどの経費」だったそうです。なので、「児童生徒の体験環境充実や実習経費等の経費を補助する」現状の制度では「対象とすることが困難」と説明したとのこと。新たな支援が可能かどうかは別途検討しているとメールにはありました。フリースクール補助じゃなくてかまわないので、子どもの権利を中心に考えてくださいと返信しました。

■で、あらためて感想ですが、子どもが直接の対象じゃなくて少しホッとしたというのが正直なところ。でも、結局フリースクールが後回しにされたことは変わらなくて、利用している子どもも一緒に後回しにされている。職員が感染すれば子どもにもうつるしね。だから学校に配布するんでしょう。やっぱり線は引かれている。最悪な線じゃなかったというだけで。これからもなにかわかったら報告します。