漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

少し先を楽しみに

■寒い。こう寒いと夏の良さがわかるね!(『大正野郎』より)

■『大正野郎』の主人公、平くんは大正趣味の大学生。浅草にある六畳一間の下宿で暮らしている。敬愛する作家は芥川龍之介。壁には竹久夢二の絵がかけられ、蓄音機から流れるのはビゼーの「メヌエット」。煙管を吸い、三つ釦のスーツに細身のネクタイ、サスペンダーが定番のスタイルだ。

■連載されていたのは俺が高校生のとき。すっかり影響を受けてしまって、床屋で「芥川龍之介みたいにしてくれ!」と言ったり、亀の子だわしで体を洗ってみたりした。なにより、ひとり暮らしへの熱がたかまった。お金がなくても、まわりから理解されなくても、自分の趣味をとことん追求する。懐中時計を懐に(あ、そういえば一時期、懐中時計を買おうと思って貯金していたことがあった)古い喫茶店を巡り、縁側で油揚げを焼く。帰省すら楽しそうに見えたんだよな。本州の大学を受験しようと決めたのは『大正野郎』を読んだせいです。結局、落ちて札幌に残ったけれども。

■こういう、少し先の未来を楽しみにさせてくれる作品って、いまだとなんなんだろう。あ、また思い出した。大学一年の言語学演習のレポートで、『大正野郎』の擬音について書いたんだった。どんだけ好きなんだ。