漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

ごめんねギャバン

〽男なんだろう ぐずぐずするなよ
胸のエンジンに 火をつけろ
おれはここだぜ 一足お先
光の速さで明日へ ダッシュ
youtu.be

■子供の頃に見ていた特撮ヒーロー「宇宙刑事ギャバン」の主題歌は「男なんだろう」という呼びかけで始まり、「おれ」という一人称を使う人が主人公なのだと伝えてくる。番組は少年をターゲットとして作られ、子供といえど男であることを意識して番組を見るんだよと主題歌は訴えているだろう。

■先般、ホームレスや生活困窮者の支援団体のトップがTwitter上で炎上した。彼は過労自殺や台風塔被災者に自己責任論を語ることへの批判をしている中で、大企業に勤める知り合いに向けて「男を見せろ」と投げかけたのだが、その言葉はジェンダーバイアスであり自己責任論批判とは相容れないだろうとツイートを見た人に批判された。すると、ジェンダーバイアスであるという指摘に感情的に反発して、強い言葉を使いだした。彼は知り合いとそういう言葉を使える仲間なのだと語り、批判する人に見当違いの言葉を投げつけてどんどん炎上していった。彼が批判され反発したのは主に女性に対してであり、最終的に自分に非があると認めたのは同業の男性からのツイートであった。この終わり方も、ホモソーシャルな関係性の中でしか反省が出来なかったのか、という印象があった。

■この事件をTwitter上で追いかけながら頭に浮かんだのが「宇宙刑事ギャバン」の主題歌だったのだ。「男なんだろう」と呼びかけられ仲間であることを認められ男性ヒーローが「ぐずぐずするなよ」と励ましてくれる、一歩先行くヒーローに自分も追いつきたくなるようなこの歌。子供の頃から今までこれにかっこよさを覚える自分がいる。しかし、この歌から引き起こされる男性としての仲間感覚は、この炎上のきっかけになったツイートで支援団体トップが見せた感覚と同じなのではないか。

■だとすれば、もう自分はこの歌に感じるかっこよさを批判していかざるを得ないだろう。

〽若さってなんだ 振り向かないことさ
愛ってなんだ ためらわないことさ
あばよ涙 よろしく勇気

うん、ごめんねギャバン。振り向かずためらわず、君が語っていることにかっこよさを感じる自分を批判的に検討していくよ。君の歌に抱いていたかっこよさは過去のものになっていくだろう。(水曜日)