漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

第12回JDEC

■JDECは、本当に失速したなというのが今回の率直な感想だ。初日の基調講演は、確保法が成立して以降の様々な集まりで奥地さんが話していることの繰り返しだった。確保法成立までの流れと成立後の変化としての「問題行動と判断してはならない」「休養の必要性が認められた」という話、そしてまだ現場には周知が行き渡っていないのをどうするかと自治体での補助金制度など経済的支援をどう実現するかの話。その他として、大学とシューレが共同で行っている実態調査について。初日以外の全体としては、フリースクールでの性被害事件を受けての権利擁護分科会があった程度で、その他の分科会は「フリースクールでの学び」「今後のフリースクールについて」など代り映えもしなかった。もちろん、確保法見直しについての議論の進捗状況や確保法に基づいて設立されてきた不登校に対応する団体や活動についてなど、新たな動きについては特に触れられなかった。

■恐らく目玉として設定されたのは、フリースクール議連所属でもあり不登校の当事者でもあった寺田学議員と奥地さんの対談だろう。夫婦揃って不登校当事者だったという議員がいるのは面白いなと思った。参議院議員になった寺田議員の奥さんは「不登校しても国会議員くらいにはなれる」とどこかの集まりで話したそうだ。漂流教室を始めたばかりの頃に、札幌にあったスコレー札幌の栄花さんが、関わった子が大学進学したエピソードを話して「不登校をやればやるほどいい大学に行ける」と話していたのを思い出した。一体、学校文化や既存社会のマジョリティ路線に上手く乗ることが可能なのだという話は、誰の安心のために語られるものだろうか。

■全国のフリースクールの中で面白そうなところを呼んで話してもらうという企画は良かった。フリースクールを選んだのは千葉でフリースクールネモをやっている前北さんで、自分もよく話していて似た匂いのする人だ。うちも漂着教室無料化の経緯について話して、会場に面白がられた。宮城のまきばフリースクールは、生徒が集まらないからと児童養護施設にいる子供を対象にしたのを皮切りに様々な困難を抱える人の居場所になっていき、今では福祉施設をいくつも運営しているという話がよかった。高岡の「ひとのま」を思い出した。大阪のフリースクールここは、「不登校・発達の気になる子のため」と対象をきっちり区切って活動するところだが、その中で利用者のやりたい事を共にやっていく姿が生き生きとしていた。これは札幌のカコタムを思い出した。二つの「フリースクール」を見て全く違う団体を思い出すのは、「フリースクール」に内包されていた様々な機能が社会状況の変化と共に個別に取り出されてきているということなのだろうか。そういえば、うちを見た人はどこかのフリースクールを思い出すことはあるのだろうか。
npomakiba.org
npokoko.org

■二日目午前はフリースクールにおける子供の権利擁護についての分科会に出席。フリースクールでの性被害事件を受けて行われたという内情は外部に周知されることは無かったが、参加した人たちは大体わかっていた。奥地さんも顔を出していたが一言も話すことは無かった。どういう意図かは知らないが何を語られるのか知っておきたかったのか、と憶測。分科会では、性被害に代表される人権侵害をフリースクールで起きないようにするために何が重要か、どのような仕組みを具体的に作るかなどの意見を出し合った。まあ、中間支援を行う団体としては、事件そのものの点検や団体批判よりも、構成団体の今後のためになることを考えていく場も絶対必要であり、それは批判と別個に行ってよいものだからな。今回の件についてTwitter上でシューレを批判したいごく一部の人たちにとって、この日誌は結構情報源になっているらしいけど、まあこんなもんです。残念ながら東京シューレを弾劾するようなことは無かったし、彼ら自身がそれを自己批判するようなことも無かったですよ。また怒りの炎を燃え上がらせるのだろうなあ。

■午後の分科会では「フリースクールの運営と経営」に出席したが、参加者は司会も含めて四名という寂しいもの。しかも、自分以外の二名は放課後等デイサービスをやっている人とフリースクールをやろうかどうかうっすら検討しているというくらいの興味の人であり、実際の運営や経営についての情報意見交換をするということは無く終わった。低調だなあ、と思っていたがラストのJDECミーティングでも分科会内容発表をする人が中々出なく、参加意識が変わってきているのだろうと思った。

■もしかすると、来年以降は経済産業省がやっているICT絡みの話がどんどん出てくるようになるのかもしれない。もしそんなことになったら、まあ付き合い方を考えなければな。(水曜日)