漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

イヤだからイヤ

■読んでいない本の紹介をするのもなあと思いつつ、おもしろいに違いないと確信している。

ぼそぼそ声のフェミニズム

ぼそぼそ声のフェミニズム

■何年か前、知人と飲んでいてこう言われた。「相馬くんは、なにかしろって言っても『イヤ』と言って従わず、なぜイヤなのか訊いても『イヤだから』しか言わない。でも、そのままそこにいるイメージ」。そのときは酔っていたせいもあってハハハと笑ってそのままだったが、最近の自分を振り返るに、なるほど彼は慧眼だった。教育機会確保法でもなんでも、俺が言いたいのはまず「イヤだ」なんだよな。説得しようとか翻意させたいの前に、俺がイヤだと思っていることを伝えたい。なぜイヤなのかといえば、イヤだから。説得したいわけじゃないから、理由なんてどうでもいいのだ。

■大阪にあるフリースクール、「フォロ」の山下さんにも勝手におなじようなにおいを感じている。大きな流れからは一歩引いて、ああでもない、こうでもないとぶつぶつブログでつぶやいている。これまた勝手な、そして若干失礼な想像だが、世のため人のためというより山下さんはおそらく自分のためにあれを書いている。俺がもっぱら自分のためにこの日誌を書いているように(なので、自分に傾きすぎないよう告知やイベントの報告を心がけている)。
bokan.blog.shinobi.jp

■もっとも、おっさんの厭世エッセイは吉田兼好センパイはじめ多くの人がしたためている。で、どれもどこかちょっとエラそうなところがある。「イヤだからイヤ」と言いながら、どこか理論武装している気配がある。『ぼそぼそ声のフェミニズム』にはそういう「一段降りたふりの高み」はないんじゃないかな。まったくの勘だけど、そんな気がして、だから読んでみたい。

■ちなみに「イヤだからイヤ」の大家は内田百閒で、日本芸術院会員に推薦されたときにこう手紙を書いて断ったんだそうだ。こういう可愛げが俺もほしいな。

・格別ノ御計ライ誠ニ有難御座イマス
・皆サンノ投票ニ依ル御選定ノ由ニテ特ニ忝ク存ジマス
サレドモ
・御辞退申シタイ
ナゼカ
芸術院ト云フ会ニ這入ルノガイヤナノデス
ナゼイヤカ
・気ガ進マナイカ
ナゼ気ガ進マナイカ
・イヤダカラ
右ノ範囲内ノ繰リ返シダケデオスマセ下サイ