漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

道教委不登校児童生徒支援連絡協議会

■全道の小中高と適応指導教室(札幌を除く)・民間の不登校支援をやっている団体を集めて、不登校対策の現状と基本的対応を確認し、事例検討も行う会議。民間としては、フリースクールから、漂流教室と札幌自由が丘、どろんこクラブが参加していた。後、不登校支援センターからも参加があった。

不登校の現状は、12月に文科省から発表されたものの道内版を発表。平成24年度北海道の不登校児童生徒数は、小学生667人・中学生3073人・高校生780人とのこと。平成20年から微減傾向が続いていること、中一で三倍以上に増加すること、小中学生のうち対応の結果復帰したのは1/4強の1012人であることなどの報告があった。これは、毎年定型フォーマットで数値だけが変わっている程度の中身だ。

■続いて、教育大札幌校の庄井先生の講演。不登校の児童生徒への対応についてだが、強調されていたのはむしろ支援する側が無理をしない・大変にならないことだった。パワーポイントの章のタイトルの中にも「見守る他者のネットワーク〜ひとりで抱え込まない援助へ」とつけられていた。「自分の辛さ、弱さ、切なさを、安心して語り合える場をつくる」というところが、フリースクール同士のつながりで出来ているだろうか、と思った。

■三番目に、全体で共有する事例発表。青少年自然の家と札幌自由が丘、美唄適応指導教室の三施設の報告を聞いた。青少年自然の家は最初の数値報告と同じような定型のフォーマットで不登校児童生徒対象のキャンプの実施報告だった。IKR調査というのが、国立青少年教育振興機構というところで作られていて、これで「生きる力」を測定しているのだそう。項目を見ると公教育がどのような人間を期待しているのか良くわかる。自由が丘の発表では、1月に公開授業をするので見に来て欲しいという話があった。なるほど、先生達が見たいのは「授業」なのかもしれない。「どういう風に子供と接しているのか知りたい」という問いかけを先生から聞くことがあるが、それは「どういう授業をしているのか」と読み直す必要があるのかも。

美唄適応指導教室の話は、資料が部外秘で回収されていて内容を思い出せない。しかし、この後の事例検討の時にも適応指導教室の指導員が話したことと同じセリフで話が始まったことは覚えている。曰く「ここで皆さんにお伝えできる良い事例が無くて」。話を聞いていくと、どちらでも「良い事例」とは学校復帰した事例のことだった。学校復帰を考える前に子供たちの苦しんでいる時間に寄り添おうという話を毎年聞いても、指導する側は学校復帰を最上の価値として自らの中に築き上げているのだから、響いていないのだろう。

■最後に事例検討を5、6人でテーブルを囲んで行った。各テーブルに適応指導教室の指導員が配置されていて、事例報告をしてくれた。小学生が徐々に通ってくるようになった話を聞き、不登校の時期に居場所が大事であることを改めて確認した。しかし、適応指導教室で学習ではなく体育の時間だけ使いたいという希望は、教育委員会と確認しなければ動けなかったそうで、現場にもっと自由度があれば居場所となりやすいのにと思った。

■最後に、一番引っかかった話。「自分達の手に負えない人をどこに繋げればいいか、パッと振り分けてくれる良いカウンセラーもいれば、何もしてくれない人もいる」との発言とそれにうなずく教師を見た。自分の付き合えない人を自分以外の権威を持つ誰かが分離してくれることを期待しているのだなと感じた。自分の辛さが指導の根源にあるならば、まずそれをゆっくりと溶かすことを推奨したい。