漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

若者の社会的孤立・排除を生まない支援体制を考える

■9/29(土)、小樽市北星余市高校主催の講演会が開かれた。元は北星余市内の教員研修だったものを、有意義だからと一般にも開放したらしい。講師は、佐賀のNPO法人スチューデント・サポート・フェイス(SSF)の谷口仁史さん。演題は「不登校、ひきこもり、ニート…若者の社会的孤立・排除を生まない支援体制を考える」。広報の遅れが響いたか、聴衆は30人程度。

■谷口さんとは初めて会うが、ezorockの草野くんに似た印象を受けた。NPOのミッションを明確に定め、課題の解決を以って社会に寄与する。事例が豊富で、課題の洗い出し、提示と分析が丁寧でうまい。課題と手法と解決が一直線に繋がっている。恐らく年齢も同じくらいだろう。ちょっと下の世代の特徴なのかな。

■眉がきれいに整えられている。スーツにネクタイ。話は淀みがない。他人に見られる、見せるということに真面目に取り組んでいる様子が分かる。

■SSFは訪問を中心に据えた活動をしている。立ち上げは2003年。漂流教室とそう変わらない。しかし、訪問一本の漂流教室に比べ、SSFはジョブトレにサポステ、児童相談所への学習支援、学校への相談員配置と幅広く活動している。それは第一に主宰者のやる気の違いなのだろうけど、上に書いたNPOへの姿勢も大きいのじゃないかと思った。

■わかりやすく言えば、本人の自発性に基づいて個人へ働きかける漂流教室に対し、SSFは相談に基づいて環境へ働きかける。ミッションとして社会課題の解決を重視すれば、どうしてもそうなる。

漂流教室が環境にアプローチしないわけではない。訪問を続ければどうしてもそういうことはある。ただ、それは活動の根幹ではない。個人と個人の関係を築く中で、環境調整をしなければいけない事態があれば動く。だからSSFのように自前の環境調整部門を持たない。外部に協力をお願いする。自分たちはあくまで変化する環境の中での本人との関係を維持する。

■そのやり方は札幌のように大きな都市、社会資源もそこそこ揃っているところだから出来るのかもしれない。SSFの活動を聞いて、巨大な相談室のようだと思った。札幌には十数ヶ所の相談室がある。あれを全て統合し、中核に訪問部門として漂流教室を置いた。そんなイメージ。佐賀県の人口がおよそ84万人。うち半数は佐賀市および周辺の都市に住む。面積は全国で42番目。地理と仕組には何か関連があるのじゃないか。(そういう研究はないのかな)

■地理的要因のほかに、俺や山田の個人主義な部分も大きく影響してるだろう。個人主義だから、どうしても相談業務が弱い。そこは強化してもいい部分だ。もうひとつ、フリースクールネットのことになるけれど、「課題解決型シンポジウム」というのはやってみてもいいな。シンポジウムで課題を定め、来年までの解決を図る。翌年、結果を報告、分析し次の課題解決を図る。これまでの取り組みの中だと塾議と似ている。

■同意を取ることの重要性、スタッフは同性をあてるところ、関係を築くまでの細かな段階設定、個の限界、組織の限界を織り込んでの仕組など共通点は多い。訪問する上での勘どころも通ずるところが多かった。それなのに活動はこんなに違う。そういうことが分かるから、ほかの団体の話を聞くのは面白い。もっとマニアックな発見もあったのだが、それは内部研修で使おう。

■講演後は、北星余市高校の校長を交えての鼎談、というか、校長先生および会場からの質問に谷口さんと俺が答えるという図式。谷口さんが資料を基に総論を話してくれるので、俺は感覚的な言葉で隙間を埋めるだけでよかった。楽チン。
NPO法人スチューデント・サポート・フェイス→http://www1.odn.ne.jp/faith1019/