漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

札幌市教育センター専門研修「不登校への適切な対応を考える」

■教員向けにフリースクールの実践を話すくらいムダなことはない。だって学校で使えないんだから。ということで、「不登校の見方」について話す。不登校は事象に過ぎないこと。不登校の子供がいたとき、最低限、その子本人、環境、時間のみっつの視点から考えて欲しいこと。子供の「生活」から離れたサポートはサポートにならないことなどを、事例を通して伝えた。

■特に「時間」の視点は大事で、例えば、学校を出てしまえば問題にならない問題というのもある。6・3・3のリズムには乗り切れない子も、9・3だったら大丈夫かもしれない。「学校復帰」=「在籍校復帰」ではなく、成長を長いスパンで考えて見て欲しい。そういう話をした。要は目標をどこに置くか、だ。

■それを考えるためには安心材料が欲しかろう。だから、フリースクールを出た後の進路について触れた。結構みんな高校だったり専門学校だったり大学だったりに進学するのだ。不登校のその後については、ほとんど何も情報がない。進学が絶対ではないが、ひとつのよすがにはなるだろう。

■最後に教師に望むことを述べた。教師の最大の武器は、毎日生徒に会えることだと俺は思っている。その中でちょっとずつお互いを知る。その武器が不登校の子には使えない。武器が使えないのに同じことをすれば失敗するのは道理だ。その武器が使えるまで、つまり、他の子と同じくらい時間をかけるか、そうじゃなければ違う武器を持つしかない。

■その「違う武器」が、漂流教室のやり方に隠されている。「目的」を持たず、ただ会いに行くこと。「目的」には裏のメッセージがつきまとう。「学校復帰」を目的に会いに行けば、「学校に戻らない自分」には用はないのか、と子供に思わせる。関係づくりに目的はたびたび邪魔なのだ。

■最後に「連携」≒「雑談」という話をした。これはここで何度も触れたのでもういい。悔やむのは、今月末の漂着宴会の宣伝をし忘れたこと。せっかくの雑談チャンスなのに。
■青葉相談指導学級は現在、一時利用、毎日利用あわせて50名が在籍してるらしい。昨年度末は80名を越えたそうだ。すし詰めじゃないかと思ったら、学校のほぼワンフロアを使えているとのこと。うらやましい。教育センターでも思ったが、それくらいの設備は必要なのだ。

■行事や体験学習が豊富で、カリキュラムも子供の状態に合わせて柔軟に構えている。不思議だったので休憩時間に尋ねてみた。カリキュラム決定はどこまで任されてるのか訊くと、まったく自由に決められるとの答。個人に合わせた対応は裁量権の幅にかかっている、やっぱり。

■札幌新陵中では不登校の子がいないそうだ。生徒ひとりひとりについて、良いこと悪いことどうでもいいこと(←これ大事)を、全ての先生が書き込み、読める仕組があること。困ったとき「困った」と呟ける土壌があること。話を聞くに、このふたつが不登校ゼロの秘訣だと思われる。(あとは学校規模か。しかしこれはどうしようもないからなー)

■こういう研修会で学校が発表すると、往々にして隙なく組み上げた校内システムの発表になる。それはそれでスゴいけど、よそで応用が利かない。その点、今回の発表は誰でもどこでも出来る。あとは校内の雰囲気で、その質問には、「とにかく続けることです」と答えていた。短期的には成果が見えなくてもひたすら続ける。漂流教室の訪問にも通ずる。

■スーパーバイザーは道教育大の平野さん。シンデレラを例に出し、昔話はハッピーエンドから遡ってストーリーを紡いでいる。しかし、そこまでにたくさんの分岐点、紡がれない物語があったはず。人は一度チャンスがあれば大人になれる。紡がれない物語はムダなのではなく、チャンスを与え続けた結果である。だから、学校も相談指導学級もフリースクールも、子供にチャンスを与え続けるところとして同じなのだ、とまとめた。

■受講者は60名。10年研修も兼ねていたらしい。こういう場で話せることで、ちょっとずつでもフリースクールが知られたらいい。同じ子供を見ているのに、行き来がないのはバカバカしい。(8/18昼)