漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

7/4星槎教育研究所セミナー

■星槎国際高校から関連団体による個別相談会への出席を誘われての参加だったが、面白そうだったので第一部から参加して話を聞いていた。今回は就労支援に絞った話で、道議の小林郁子氏、おがるの加藤潔氏、北海道学習障害児・者親の会クローバーの永瀬次郎氏、星槎高校の千葉翔太氏の四人が演台に立った。

■小林氏は北海道で行われている施策について説明していた。道内の18歳未満人口は約88万9千人で、文科省統計で言われている発達障害を持つ人がクラスの6.3パーセントいるということから推計すると、約5万6千人の人が教育・就労の支援対象として考えられることになる(ちなみに札幌のみだと約2万人)。今年3月には「障がい者及び障がい児の権利擁護並びに障がい者及び障がい児が暮らしやすい地域づくりの推進に関する条例」というながーい名前の条例(縮めて「障がい者権利条例」)が制定され、第五章で就労の支援について推進計画の策定や企業認証制度などが提案されている。また、国としては2006年に「発達障害のある人の雇用管理マニュアル」を作成しているので、対応しようと考える企業には助けになるだろう。

■ただ、こうした条例も施策もどれほどの人が意識して暮らしているのか。それは丁度、不登校に対する施策における認識が「不登校は誰にでも起こること」となっていて、対応もかなり柔軟に行えるようになっているのに、現場や社会では全然その理解がないケースにしばしば遭遇することに似ている。施策が何をココロとして出来上がっているのか、広報する必要はまだまだあると思うのに全然それは施策で出てこない。何というか、心の中ですっごく好きなのに告白は出来ないでいるのを「これでいいんだ」と誤魔化している人みたいだな。

■加藤氏は加藤流の就労支援のとらえ方と情報を話してくれた。彼が考える就労支援の四段階というのがあり、就職活動の前に1、お金のために働く 2、自分の身の丈の働き方を知る という二段階をしっかり教えていないと、就労がうまくいかない、もしくは続かないという状態になるという。また、雇用する側にメリットをどう与えるかという話題で、雇用すると補助金を出すという制度があれば、国としては納税者が増えるのだから、出した分以上に戻ってくると考えることができるという話をしていた。いつも通り、就労というゴールを了解した上で、人の育ちを熟考しそれを信頼して支援を考える視点からの話しを聞けてよかった。こういうしっかりした視点があるのが、自分達が支援の一端を担う時に頼もしいのだ。

■就労は雇用する側にもされる側にも利となる部分が求められる社会活動であって、教育とはその点が違う。しかし、現状、発達障害を持っている人の場合には雇用する側が利を見つけられないで、労働に参加するという機会自体が用意されていないことが多い。クローバーの会では、発達障害を持って生きる人がどのような貢献をできるか、実際の就労支援を行い確かめていった。永瀬氏の報告はそのまとめで、事業の写真をhttp://www.ld-clover.info/で見ることができる。09年度は農業活動を就労支援として行っているそうで、そちらの報告も是非聞きたいものだ。

※通信366日目に掲載したものに若干加筆修正しました。